自分見守りの重要トピックスといえば「安否確認」。一人暮らしの人にとっては、安否確認の体制をどうするかが結構大きな課題です。
漠然と悩むより、少し分割したほうが考えも整理されやすくなりますし、より現実的でかつ効果的な解決策も見つけやすくなりそうです。
INDEX
- 「トリガー」と「アクションに」分割して考える
- 異常事態の検知か、日常ルーティンの中断を検知か
- 他にもいろいろある「何かおかしい」というサイン
- スマートウォッチの緊急通報システム
- 家族や親しい友人にどう通知する?
- 近隣の人に安否確認してもらうには
- 通知を受け取った人・異常かもと気付いた人に期待するアクション
- 複数パターンを組み合わせて安否確認システムを作る
「トリガー」と「アクションに」分割して考える
まず最初の分割は「トリガー」と「アクション」です。
たとえば火災報知器の例でいうと、「火事の発生を検知する」というトリガーと「火事が発生していることを警告する」というアクションのふたつに分けられます。前者は熱や煙を手掛かりに火事と思われる状況が発生したことを検知しますし、後者は大音量のブザーを鳴らしたり、警備員室や管理人室に通知をします。
この2つが決まれば、何を準備すればいいかも見えてきますし、トリガーとアクションの組み合わせ次第でいくつかのパターンの「安否確認システム」を考えることもできます。
異常事態の検知か、日常ルーティンの中断を検知か
まずトリガー部分について考えてみましょう。
具体的な「大事件」を想定して考えたほうが、イメージもしやすくなるかもしれません。
例えばこんなのはいかがでしょうか。
一人暮らしの人がお風呂から出たところで脳卒中となり、倒れてそのまま意識不明に。
このままだと外部の人に助けを呼ぶこともできませんし、そのまま長時間が経過すれば治療開始も遅れて命にもかかわります。
・異常事態の検知
・日常ルーティンの中断
安否確認での「検知」には2パターンがあり、ひとつは「異常事態の発生」でありもうひとつは「日常ルーティン中断」の状態が一定時間続くことです。
たとえばApple Watchには「衝突事故検出」という機能があります。内蔵しているセンサーで強い衝撃を受けたことを検知すると、一定プロセスを経て自動で119番通報をするといったものです。
この場合には「異常事態」を検知しているといえます。最近はAI進化で、個人向けの人感センサーやネットワークカメラにも「転倒検知」が搭載され始めています。今はまだ精度の問題もあり、「β版」という位置づけになっているものが大半ですが、AIの進化でいずれ実用に耐えるものになるでしょう。
一方、セコムの高齢者見守りサービスなどでは、トイレや寝室のドア、冷蔵庫といった「毎日必ず開け閉めする場所」に開閉センサーを取り付けたりします。そして一定時間それが開け閉めされないと「何か異常事態が起こっている可能性あり」と判断して、電話連絡をしたり、警備員を急行させたりします。これは「日常ルーティンの中断」です。
おそらく安否確認のトリガーの大半は、こちらの「日常ルーティンの中断」だと思います。いろいろあるでしょう。
- 職場に出勤してこない
- テレワークでオンライン会議を連絡なしですっぽかした
- 飲み会や遊びの約束などを連絡なしですっぽかした
- 頻繁に電話やメール、メッセンジャーやりとりしている人との間の連絡が途絶えた
- 郵便物が受け取られないままポストの中に溜まっている
- 定期購読している新聞や牛乳・ヨーグルトなどが溜まっている
見守りテック(見守りのためのIT機器やサービス)を導入している場合だと、こんなトリガーが考えられます。
- 寝室やトイレ、玄関のドアが長時間開け閉めされない(開閉センサー利用)
- 寝室やトイレ、リビングなどの照明が長時間オン・オフされない(見守り電球やスマートリモコン利用など)
- 家の中で何も動きがない(人感センサー利用)
- 電気・ガス・水の利用が長期にわたってない(スマートメーター利用の見守りサービス利用)
一人暮らしの高齢者の中には、「何かあった時に気付いてもらえるように」という目的で新聞やヤクルトの定期購読を続けている人もいます。私の叔母もそうでした。新聞販売店でも、新聞が溜まっている時にはその地区の民生委員などと連絡をとりあって対処しているところがありますし、自治体とヤクルトが提携した一人暮らし高齢者の見守りサービスなどもあります。
他にもいろいろある「何かおかしい」というサイン
最近はオンライン全盛で、人によっては友人や離れて暮らす家族・親戚とのやりとりもオンラインが大半を占めるなんて人もいるでしょう。テレワークで出社自体が週1回程度なんてこともあります。私自身も、フリーランスでパソコンを使った在宅ワークなので、仕事つながりを含めほとんどの人とのやりとりはメールかメッセンジャーです。友達との交流もSNS上で行われ、電話での会話なんてことは滅多になくなりました。
そんな環境だと、実はSNSなどで異常検知されるというケースもあるでしょう。
たとえば毎日欠かさず投稿しているSNSで急に発言が消えてしまうと「何かあったんじゃないのか」と心配になる人達が現れるかもしれません。
親しい友人がいれば、個別にダイレクトメッセージなどを送ってくれ、反応がなければ電話をしたり、近くに住んでいる人に様子を見に行ってもらうなんて動きになる可能性もあります。
安否確認のために、新しいルーティンを始めるという方法もあります。
例えば毎日食べたものをインスタグラムに投稿したり、Facebookなどに日誌を投稿する。もしそれが中断していたら、何か起こっているかもしれないので電話をしてほしいと親しい友人や家族に頼んでおくというものです。一人暮らしの人同士で相互にそれを行う互助的なネットワークを作ってもいいでしょう。
何がトリガーになるのかは、その人のライフスタイルによって変わります。
毎日通勤している人なら、「職場に連絡なしで欠勤した」が最大のトリガーになりますし、在宅ワークの人なら日常生活の中で何かトリガーになるものを見つけ出す必要があります。
毎日SNS投稿をしている人で、もしそれが急に止まったら何人かの人が「おや?」と思うとしても、それだけではわざわざ連絡まではしてこない可能性大です。トリガーとして有効化するためには、親しい人に「こんな理由で自分に何かあった時の安否確認を考えている。協力してほしい」など頼んだ方がいいでしょう。
自分にはどんなトリガーが考えられるか、可能性あるものを書き出しながら検討してみましょう。
スマートウォッチの緊急通報システム
トリガーについてある程度整理されてきたら、次はそれを受けてどんなアクションを発動させるかを考えるのですが、その前にちょっと、スマートウォッチの最新の緊急通報システムについてみてみましょう。とてもよく考えられているので、きっと参考になると思います。
私は自分で利用していないので、読んで得た知識だけですが、ざっくりまとめるとこんなプロセスです。
- 車の衝突事故に巻き込まれ激しい衝撃がApple Watchで検知される
- Apple Watch画面にSOS発信する画面が表示される→SOSをスライドさせると、連携しているスマホから119番通報
- チャイム音が鳴り手首がトントンと軽くタップされる/iPhoneが激しく振動する
- <反応できる場合>Apple WatchもしくはスマホのSOSボタンをスライドして緊急電話をかける/<反応でき緊急電話不要な場合>キャンセルをタップ
- <反応できない場合>20秒が経過すると自動的に緊急通報サービスに連絡→緊急連絡先が設定されている場合、そこへも位置情報とメッセージが届く
- デバイスにメディカルIDが設定してある場合画面にそれが表示され、救急隊員が医療情報を確認できる
ポイントは、衝撃が検知され衝突事故にあったと想定された場合、いきなり119番通報やあらかじめ登録しておいた家族や友人などに通報が行くわけではないところです。まずは簡単に緊急通報できるボタンが画面に表示され、それをスライドさせることですぐ手が届く場所にスマホがなくても電話がかけられるようになります。
また、意識を失ってしまっていたり、意識はあるものの手足が全く動かせない状況もあるでしょう。そんな時には20秒経過すると自動で通報がされます。
- ワンクッション置いて、まずは本人確認を促す
- 緊急事態ではない場合には本人がキャンセルできるようにする
- 反応がないまま一定時間が経過したら、自動で通報が行われる
- 緊急通報と同時に、家族などあらかじめ登録しておいた緊急連絡先にも連絡がいく
- その際、位置情報のデータも届く
- さらに駆け付けてきた救急隊員が医療情報にすぐアクセスできるようになっている
とてもよくできたシステムだなと思います。
もちろんこれでも誤報はあります。数年前、スキー場からの119番誤通報が相次いでニュースになりました。雪の上での転倒衝撃で発動してしまい、だけど分厚い防寒ジャケットなどのせいで本人が気付かずということだったようです。
家族や親しい友人にどう通知する?
Apple Watchを利用して「衝突事故検出」機能を利用するなら、緊急連絡先に家族や友人を登録するなど、初期設定をしておけばいいだけですが、自前で安否確認のシステムを作る場合には、自分で通知部分も仕込んでおく必要があります。
私は以前、離れて暮らす一人暮らしの母親の安否確認などを、スマートホーム製品メーカー「SwitchBot」のアプリなどを使って行っていました。認知症の初期症状で勘違い外出が続いてしまったので、玄関に設置した開閉センサーが動体検知する(母親が玄関に近付いてくる)と、私のスマホアプリに通知がくると同時に、LINEでも通知が届くようにしていました。
人感センサーもSwitchBot社のものを使っており、トイレの水槽タンクの上に置いて母親がトイレに入ると私のスマホに通知が届く設定にしていました。本当は「4時間全く人感センサーが動体検知しなかったら通知される」ように設定したかったのですが、「未検出」の最大時間は30分でそれ以上に設定することができませんでした。
異なるサービスを連携させるためのサービスもあります。
メジャーなのは「IFTTT」というものです。これを使うと「SwitchBot開閉センサーが検知するとLINEにメッセージが発進される」といった設定がスマホアプリで簡単にできます。
先程のSwitchBotアプリの機能だと、見守ってくれる相手にもSwitchBotアプリをスマホにインストールしてもらう必要がありますが、LINEに通知されるだけなら、グループLINEを作成してそこに通知したい相手のLINEアカウントを登録すれば済むので、相手にも余計な手間をかけずに済み、複数の人に同時に見守ってもらうこともできます。
今はノーコードで簡単なプログラミングもできる時代なので、自分で見守りアプリ作りに挑戦してみるのもありだと思います。私も作る予定です。
近隣の人に安否確認してもらうには
何かあった時、近隣に住む人が「おかしい」と思ってくれ確認や通報などをしてくれれば、何より心強いもの。
そのためには、日ごろからの近所付き合いが欠かせません。自治会や町内会があればその活動を通して近隣の人との交流を深めておくことも大事でしょう。
近隣在住者だけではなく、地元のボランティア活動や習い事などで近くに住む人たちとのネットワークを作っておくのもありです。一人暮らしなことや、何かあった時の連絡先などを伝えてお願いをしておけば、いざという時に動いてくれる可能性はあります。
とはいえ世の中、善良な人ばかりではありません。ご近所さんだからといって信頼できるわけではないでしょう。近隣の人に自分の状況が知られるリスクも念頭に、頼っていい相手かどうかを見極め、かつネットワークカメラの設置など、保険もしっかりかけておくことが大事かなと思います。
通知を受け取った人・異常かもと気付いた人に期待するアクション
肝心なのはここです。
SNSでつながっている親しい友人や、近所に住む人も、「どうしたんだろう、何かあったのでは?」と気になりつつ、単に旅行にでかけているだけかもしれないし仕事で忙しくて家に帰っていないだけかもと思って、ちょっと心配な気持ちを抱えたまま何もできずとなってしまうことは多いものです。
謙虚な人ほど、「きっと自分よりもっと親しい人がいるだろうから、自分が動くまでもない」と遠慮します。
そうならないよう、あらかじめお願いできる関係の人には、離れて暮らす家族や親戚などの連絡先を伝え、連絡がとれなくなるなどあったら知らせてほしいとお願いしておきましょう。親しく交流している近所の人がいれば、その人の許可をもらってその連絡先を伝えておくのもありだと思います。近所の人にも家族や親せきなど身内の連絡先を伝えておきましょう。
誰か一人に負担をかけてしまうのが心配という場合には、共通知人の人2~3人にまとめてお願いしておくといいかもしれません。そうしたら何かあった場合には、その2人なり3人なりが相談して対処してくれます。一人で悩むより気持ち的にも楽なはずです。
一人暮らしの人同士のそんな互助的ネットワークを、LINEグループなどで作っておくのもありですね。
複数パターンを組み合わせて安否確認システムを作る
安否確認は、ひとつだけ設定しておけばOKというわけではありません。
一人暮らしだった伯母は、何かあった時に私に連絡が入るよう、新聞配達の人にもヤクルト配達の人にも私の携帯電話番号を伝え、また住んでいた公団団地の見守りサービスにも入会して、ボランティアの方から電話を定期的にしてもらうこともしていました。なのに悪条件が重なり、自治体管理事務所から連絡を受けた私が駆け付け、警察・消防の人たちが鍵を開けて部屋に突入したのは、伯母が脳梗塞で布団から起き上がれない状態になってから9日が経過した後でした。
自分が動けなくなり、外部に助けを求めることもできなくなった時、その状況に身内や親しい友人、近所の人などに気付いてもらえるパターンをいくつか考え、セットしておく必要があると思います。
+ + +
安否確認体制をどう作るかについては、もう少ししっかり考えてみたいと思いますが、長文になってしまったのでとりあえずここでいったん終わりにします。
コメントを残す